岡山県久米郡美咲町が飯岡コミュニティセンターの整備に伴い、 同町飯岡の鷲山山麓遺跡で行っている試掘調査で、白鳳期(7世紀後半)から奈良時代初頭(8世紀)の軒丸瓦などが出土した。 白鳳期に創建された寺院の跡 「飯岡廃寺」 の建物が存在したことを明らかにする貴重な発見。
律令体制の確立・整備に伴って各地域に建立された寺院の跡で、白鳳期の遺物が出土するのは県内でも珍しいという。
敷地内北西側の区域を約1~1.2メートル掘り下げたところ、90センチ以上の層になった大量の瓦が出土。寺の廃絶後に瓦を廃棄した場所とみられ、この場所に大きな堂宇があったことが裏付けられた。
その中から「単弁十二葉蓮華文軒丸瓦」と呼ばれる、白鳳期の瓦が見つかった。創建時の瓦と想定され、岡山市の富原北廃寺で出土した瓦と同じ型とみられるという。
また、8世紀初頭の「均整唐草文軒平瓦」が出土。これは平城宮跡の瓦と同一文様で、当時の律令国家と地方の関係を考える上で重要な手がかりになりそうだ。今回、創建時の瓦と8世紀初頭の瓦が見つかったことから、途中で寺を増改築した可能性も想定される。
さらに、敷地の北東部区域では、白鳳期から奈良時代の集落の跡と考えられる掘立柱の穴が複数検出された。
遺物や遺構を保存するため、センターの位置をずらして建設することになった。
調査を担当する町生涯学習課の田中清美学芸員(71)は「これまではっきりしていなかった飯岡廃寺の位置を確定する大きな成果。飯岡の地は古来、吉井川と吉野川が合流する交通の要衝であり、近くには月の輪古墳もある。この地が連綿と繁栄してきた地域の歴史がうかがえる」 と話している。
