稲葉なおと/岡山・津山市

ひと 稲葉なおと
         

 インターネット上で連載中の小説『トキノシラベ』に、4月に改修を終えたばかりの津山文化センターと桜が満開の津山城跡が登場する。洒脱な文体でつづられる、「時」と「音楽」をテーマにした家族の物語。岡山県津山市出身の稲葉浩志さん(55)がボーカルを務める人気ロックバンドB’zの3年前の津山凱旋公演を思わせる描写が話題を呼んだ『ホシノカケラ』の著者・稲葉なおとさん(60)=東京都=の書き下ろしだ。
 「セイコー・ハートビート・マガジン」で5月27日から連載がスタート。最終話の第5話は今月22日に掲載を予定している。
 大手建設会社に勤める父親が、娘に誘われ見知らぬ南の島へ旅に出るところから始まる。娘はバイオリニストの叔母のコンサートを取材した小説で作家デビューしたばかり。
 物語の発端となるコンサート会場が「津山という町」の「つい最近、大規模な改修工事をして蘇った昭和の名建築」である津山文化センター。ほどけていく記憶のワンシーンとして出てくる津山城跡は「道が見えないほど埋め尽くした桜の花を見下ろしながらの花見なんて、初めてで、桜色の雲の上を歩いている気分でした」―と説明される。
 『トキノシラベ』と『ホシノカケラ』はタイトルがどちらも片仮名で6文字。いずれも音楽家、コンサートの舞台監督、舞台建築家が登場し、「父親と子どもの確執」が主要なテーマで、姉妹小説といってもいいような内容だ。
 「『ホシノカケラ』は、いつか津山のことを書いてみたいと思いつつその機会に恵まれなかった私にとって大切な一冊になった」と稲葉なおとさん。同書を読んだSEIKOの関係者らから小説執筆の依頼を受け「『ホシノカケラ』では物語のエンディングの舞台になった津山を、今度は物語の発端にするような物語を描きたいと思った」。
 また、イラストレーター・坂内拓氏による津山城跡の挿絵は、シンプルな線と大胆な構図で津山城の魅力を最大限に引き出しながら一目でそれと分かる出来栄えで、津山城のPRに一役買っている。
 稲葉なおとさんと従兄で、稲葉浩志さんの兄の和菓子店経営・稲葉伸次さん(59)=津山市=は「今作の津山は、当たり前のようにすっと入ってくるところがいい。津山をこうして全国に発信してもらえて、ありがたいです」と話す。
 『トキノシラベ』最終話の第5話が掲載される7月22日は、奇しくも3年前にB’zの津山凱旋ライブが開かれた日。「津山から始まる物語が、津山にとって大切な日に最終話を迎える。不思議な縁ですね」となおとさん。
 「今後も津山のことを書き、(写真家として)撮り続けたいと思っている。微力ながら、少しでも多くの方が津山という古都に興味を持っていただけたらうれしいです」
写真
『トキノシラベ』が掲載されている「セイコー・ハートビート・マガジン」のウエブページ

稲葉なおとさん


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