「やっぱり雨ね」
デビュー35周年を迎えた稲葉浩志さんの作品集『シアン SINGLE&SOLO SELECTION』が発売された29日、母・邦子さん(85)=岡山県津山市=の手元にも本が届いた。
岡山県津山市出身で人気ロックバンドB‘zのボーカリスト・稲葉浩志さん(58)の初の著作となる作品集「...…
稲葉さんはファンの間で「雨男」として知られている。2017年のツアー「B’z SHOWCASE 2017 -B’z In Your Town-」で故郷津山に凱旋(がいせん)した際もスコールのような大雨に見舞われた。「お父さんのうれし涙だと思った」。そう話す邦子さん。あの日の雨に思いを重ねた。
B’z、ソロのシングル表題詞、ソロアルバムの歌詞計138曲分をはじめ直筆の作詞ノート、35年の軌跡を振り返る特別インタビュー、撮り下ろしの写真など「作詞家としての全て」が詰まっている。意外なことに初の著作だ。
ページをめくる邦子さんの手がとまる。1988年のデビューシングル「だからその手を離して」。
「レコード盤でした。”だからその手を離して・・・ひとりでも大丈夫さ”。この歌詞を見て、これで安心できるかな、と思った。『お母さん、大丈夫、僕は一人じゃないから』、そんな意味だと受け取った。本人に言ったことはないけれど、本人はそんなつもりじゃないかもしれないけれど、これで安心できるかな、と思った」。そう振り返る。
どこにでもある普通のキャンパスノートに直筆でつづられた歌詞は、苦心の跡が残る。「家に帰ってきたとき、いつも持っていて、よく見せてくれた。あのノートがこんなふうに本になるなんて夢にも思っていなかった」。
『シアン』が届いたことを早速、夫・一夫さんの仏前に報告した。凱旋コンサートの際も邦子さんは一夫さんの写真を手に見守った。「一番喜んでいるのは、夫だと思う」。
邦子さんは浩志さんのコンサートに行くと、アンコールのとき必ず、心のなかで「大丈夫」と声をかけるという。
「大丈夫。よく頑張ったね」。邦子さんは『シアン』を手にして、そう心の中で浩志さんに声をかけた。
35周年を記念したネットのインタビュー動画で、浩志さんが一夫さんのことを「分身」、邦子さんのことを「空」と答えたことがファンの間で話題になった。
「空ってどんな意味だろう」――。邦子さんは目の前で浩志さんに電話をかけた。
イナバ化粧品店にて「稲葉さんを生んでくれて感謝」
邦子さんはB’zファンの間で”イナママ”として親しまれている。浩志さんの実家でもあるイナバ化粧品店(津山市川崎)は連日ファンが集う。29日も『シアン』を早々に手にした大勢のファンが駆け付けた。
最初に邦子さんにサインをしてもらったのは沖縄県から来ていた会社員・伊禮正人さん(44)。「意外と寂しがりやで共感できる歌詞が好き。『この手をとって走りだして』とか切なくて最高です」と話す。初の津山に「稲葉さんという神様を生んでくれたお母さんに感謝です」。
埼玉県から親子で来ていた会社員の細村真由美さん(52)は「稲葉さんの歌詞の深い世界感が好き。津山を感じられる詞もあり、どこにいても津山に思いをはせることができる。大きな愛に包まれている感じ」と話していた。
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