江戸時代から続く町家「片山邸」を活用した岡山県津山市のギャラリー・民泊施設NishiIma25で13日、兵庫県の美術家・古巻和芳さん(58)の企画展「客人の宿―竹斎と敏生とともに」が始まり、女性や子どもをかたどった木彫作品が施設に残る美術品や空間と調和し、来場者たちを魅了している。11月2日まで。
1990年代から活動し、絵画や彫刻、インスタレーションなど多彩な意欲作を手がけている古巻さん。同展では室内にある津山藩の絵師・飯塚竹斎(1796~1861年)のふすま絵や鏡野町土居出身の彫刻家・桜井敏生さん(1940~2023年)の秀作に感銘を受けたことで、両者の作品と空間を生かした他では成しえないサイトスペシフィックアートを展開。津山に来た「客人(まれびと)」をテーマに30点を展示している。
このうち、女性らが重りを手にして上手にバランスをとりながら絹糸の上に立つ「Skywalker(スカイウォーカー)」は近年作り続けているシリーズ作品。一直線に張られた糸は人生の道のりや時間などさまざまな意味が含まれており、展示場所の景観を借景に観賞することで多様な解釈が生まれるという。今回は竹斎の山水画や桜井さんの動物の彫刻に合わせて設置され、独特の雰囲気を醸し出している。

さらに庭では、「宿泊した施設に貢献したい」と庭内を整備したスイス人女性に敬意を表した作品「サンドラの庭で」を見ることができる。このほか新作「星に立つ人」なども発表。両作品とも材質の重さを感じさせない軽やかな姿が印象的だ。

古巻さんは「言葉にできない思いを造形で見せることができるのが美術のおもしろさ。展示を通して生命や歴史、時間などを感じ取り、いろいろな考えを巡らせてもらえたら」とPRしている。
