「私にとって橋といえば今津屋橋、山といえば神南備山。津山はそのようなまちなのです」
そう話すのは、落語家の立川晴の輔さん(48)=東京都。作陽高校の卒業生で3年間、津山に住んでいた。「10年間に匹敵するような濃い日々でした。語り尽くせないほどの思い出が詰まっています」と振り返る。そんな晴の輔さんの凱旋独演会が17日、加茂町塔中の加茂町文化センターで開かれる。
晴の輔さんは1997年に立川志の輔師匠に入門、07年に行われた第1回東西若手落語家コンペティションでは初代グランドチャンピオンに輝いた。13年に真打ちに昇進。19年には「笑点」大喜利で、療養中の三遊亭円楽師匠の代演を務め、立川談志一門の落語家として50年ぶりに出演して話題になるなど、活躍の場を広げている。
昨年から世界を席巻している新型コロナウイルスは、晴の輔さんの落語家人生にも大きく影響した。公演の機会は激減。また「落語は、お客さんの笑い声でリズムをとって、お客さんと一緒につくっていくもの。配信など無観客での落語会を何回も試しましたが、このやり方だという形は見つかりませんでした」と語る。
「でも逆に、これまでどれだけ恵まれていたかを痛感しました。落語はお客様が立ち上がったり、大声を出すようなことはありません。私も座布団から動きません。マスクをきちんと着用していただければ、安心して楽しむことができます。入退場時に密にならないよう、今スタッフと知恵を出し合っているところです」
独演会の舞台の加茂町文化センターがある地域は、青春の一コマを彩った思い出の場所だ。「同級生に加茂の子がいて、遊びに行きました。30年前、美作加茂駅で下車しました。素敵な場所です。だけどいつの間にか津山市に編入されていて、驚きました」。
古典落語が好きだという晴の輔さん。今回の独演会の演目は「ある程度想定して準備しますが、最終的にはお客さんの空気、高座の上で決めます。加茂でやるのは初めてなので、落語を観るのが初めての方でも楽しめる演目を考えています」。
コロナ禍のなか世界中の人たちが気持ちの晴れない日々を送っている。「こんなときだからこそ、笑いの時間、笑顔の時間をお届けしたい。もやもやしても、笑っても、流れる時間は一緒。だったら一秒でも笑顔でいる時間が長い方がいい。加茂で一緒にたくさん笑いましょう」。
独演会は17日、加茂町文化センター・エスペリアで開催。午後2時開場、3時開演。全席指定、客席を一席ずつ空けた配席で、全250席。料金は2000円。
問い合わせ、申し込みは、津山朝日新聞社(℡223135)。