「アメリカではウイズコロナが浸透し、完全に日常生活が戻っている。経済を動かすという意味では、日本の現状に大きな危機感を抱いている」
米国松下電器の社長、会長などを歴任した岩谷英昭さん(77)=津山市出身、東京都=は、1年振りにアメリカに滞在した際、強くそう感じたという。米国経済を熟知する岩谷さんに、「危機感」について話を聞いた。
―アメリカでは完全に日常が戻ってきていると伺いました。
岩谷 一カ月ほどシカゴとロスの娘の元を訪問した。コロナ禍が始まって3回アメリカに帰っており、今回は1年ぶり。昨年の東京オリンピックころはみんなマスクをしていた。しかしいまは、マスクをしている人はほとんどいない。電車、バス、飛行機、レストラン、学校、どこにもいない。その風景は極端にいえば、コロナは収束している。少なくとも精神的には収束している。毎日14万人がコロナに感染しているが、インフルエンザ程度の扱い。
―危機感の理由は
岩谷 経済を動かすという意味では、アメリカにやられると思った。アメリカは経済を取り戻す方向に舵を切った。レストランでもデパートでもかつての日常が戻っている。ウイズコロナの仕事、遊びが浸透している。
―ウイズコロナの内容は
岩谷 マスクは必要な人はきちんとしている。疾患のある人、医療従事者、高齢者はNOISH認定のN95規格を使っている。
PCRと抗原検査は日常に定着している。人がたくさん集まる場所、パーティーに行くときや年を取った両親を訪問するときは感染させないために必ず検査を受ける。重要なお客さんと会うときも検査を受けるか、またはセルフチェックで抗原検査を行う。これをエチケットとして徹底している。
―日本と比較してどのように思いますか
ウイズコロナのライフスタイル定着をうらやましく思う。確かに多くの犠牲者が出たが、普通の生活に戻った。必要なコロナ対策をしっかりしている点を評価したい。企業は従業員に検査キットを配布し、行政も支援している。各家庭には検査キットが十分に行き渡っている。
―何を訴えたいですか?
岩谷 日本の夏は暑い。津山の商店街を歩いていると、正直にいって、複雑な気持ちになる。コロナ禍で多くの時間を失ってしまった。経済しかり。失われた時間を少しでも取り戻していかなくてはならない。
テレビで大谷翔平選手の活躍を見てください。球場の観客はほとんどマスクをしていない。ウイズコロナのチャレンジが必要ではないか。
写真
シカゴミシガン通り、ウォータータワー前=岩谷さん撮影