美作大学公立化の有効性などを議論する「有識者検討会議」の最後の会合が5日開かれ、岡山県津山市に提出する報告書案が示された。多角的な議論を重ねた結果、「公立化は他の方策と比べ、学生募集や財務基盤の面でより実現可能性が高い」と評価している。
市への提言とする報告書案では、他法人への経営譲渡や広域での取り組みなど公立化以外の選択肢も検討したが、いずれも「即効性や実現可能性に乏しく、多くの課題を抱えている」とした。また、公立化後20年間は累積黒字を維持できる見通しや、美作大学が地域にもたらす経済波及効果は年間19.1億円に上る試算などをデータで示している。
一方、私立のままで存続する場合は「持続可能な経営基盤を再構築することは極めて困難な道のり」と指摘。収支シミュレーションでは累積赤字の拡大が見込まれ「学生数が減少し、経費削減の努力を続けたとしても恒常的な赤字となり、施設改修などの積み立てもできないため、大学の存続が危ぶまれる」としている。
公立化の是非について「『大学を核とした持続可能なまちづくりを実現するための未来への布石』と位置付け、短期的な視点や主観に左右されず、十分な議論を尽くし、地域全体にとって最適な判断がなされることを期待する」と総括している。
また、美作大学付属幼稚園のあり方については「市内全体の幼児教育体制も視野に入れながら、一体的に検討する必要がある」とした。
この日、山北の市役所で開かれた会合には、学識経験者や教育・商工団体の関係者ら9人が出席。西山修会長(岡山大学大学院教育学研究科副研究科長)は「データに基づく意見をまとめ、さまざまな可能性を比較、検討した結果、公立化は大きな一つの選択肢であることを示した。十分な議論ができた」と述べた。
報告書は今月中に谷口圭三市長に提出する予定。
同大の公立化をめぐっては、少子化などで志願者数が減少し、今後の存続が危ぶまれるとして大学を運営する美作学園が昨年1月、市に公立化の検討を要望。有識者会議は今年6月からこの日まで5回開催された。
