苫田ダムの建設をめぐり約40年に及んだ反対運動の歴史を伝える初の資料展「いまあらためて苫田ダムを問う」が、岡山県苫田郡鏡野町竹田のペスタロッチ館で開かれている。約500戸に及ぶ世帯を水没させたダムの完成から20年。国と県にあらがった人々が残した記録と記憶を後世へと引き継ぐ。7日まで。
運動に関わった人や関係者でつくる実行委(武田英夫代表)主催。メンバーが収集し、町に寄贈した資料の中から、写真や映像、文書資料など象徴的な129点を並べた。
1957年に明らかになったダム構想に対し、水没地区の旧奥津町が町是とした「絶対阻止」の看板、阻止同盟結成時の地元紙の記事、県政の強行姿勢と戦う集会やシンポジウムの写真、裁判資料などが展示され、激しい運動の様子を回顧している。
重機で取り壊される家屋を眺める住民の背中や水没前の神社の姿、山肌を削って進められる土木工事の様子など、ダム問題に揺れながら失われる古里をとらえた貴重な写真もある。
反対派町長の相次ぐ辞職など関連する出来事を記した年表も掲示され、来館者からは「国や県の強引なやり方に、住民にとっては残るも地獄、去るも地獄だったろう」といった声が聞かれた。
初日の29日は、旧奥津町が「苫田ダム阻止特別委員会条例」を制定して65周年の記念日。実行委は「政治と行政のあり方を見直し、苫田ダムのような強権的な手法、右肩上がりの大型開発といった理不尽を繰り返さない時代への示唆としたい」と話している。