10月の臨時国会で衆議院外務委員長に指名された自民党の阿部俊子衆院議員(61)=岡山3区、5期=に、委員長としての決意や審議した法案の内容などについて聞いた。
――委員長に就任しての抱負は。
外交は安全保障の礎であり、近年その重要性はますます高まっている。日本国民の平和を守るため、どんな時も、外交において対話、話し合いを続けていくことが必要不可欠だ。安定した日本外交の実現に向けて精進していくつもりだ。外務委員会における委員長としての職責を果たすことだけではなく、広く活動したいと考えている。先日、在京の駐日女性大使をお招きし、日本が世界121位であるジェンダーギャップ(男女格差)の原因や、これからの教育など、多岐にわたる議論をさせていただき、日本が学ぶところは大きく、女性議員としての自分の責任は大きいと実感した。
――外務委員会での審議法案は。
重要法案である日英包括的経済連携協定(日英EPA)の一本だ。EU離脱後の英国との日EU・EPAに代わる新たな貿易・投資の枠組みを規定するもので、EU離脱後の英国が主要国と署名する初のEPAとなる見込み。協定は良好な日英関係をさらに強化し、深化させていくための重要な基盤となる。英国には日系企業が約1000社進出し、約18万人の雇用を創出していることからも、ビジネス上の大きな意義がある。
――国政の課題に対し、一議員としての活動は。
これまで、子どもや女性といった社会的に弱い立場の人々を守るための政策実現に努力してきた。現在、少子高齢化対策の議論の中で、不妊治療の保険適用拡大に関する話が出ている。これについては党内でもいろいろな意見があるところ。その一方で、日本における人工妊娠中絶は年間約16万件である。出産における負担を軽減するために出産一時金を引き上げる話が検討されたが、一律に引き上げることには、私は反対だ。一時金は妊娠12週を経過した人工妊娠中絶手術も出産対象となり、支給される。出産一時金が増額されると、人工妊娠中絶手術費用を差し引いた手元に残るお金が増えることになる。「中絶は12週まで待ってから」ということにつながりかねない。
――今後、中山間地域の振興にどう取り組むのか。
中山間地区の現状を知っている国会議員はほとんどいない。「私の地元には待機児童はいない」と東京都選出の国会議員に話すと、「そんな所があるのか」と驚かれる。また、「地域の若い衆は70代」という話にも驚かれる。日本の国土の7割が中山間地域であり、中山間地域の人々が国土や環境を守っている。少子高齢化で人が減っていく中、いま必要なのは「農業政策」ではなく、草刈りと戦いながら地域を守っていく「農村政策」だ。儲かる、儲からないという視点の農業の話ではない。いかにして草刈りや鳥獣被害との闘いで農地を守っていくか、祭りや地域の伝統を守っていくか、ということを社会政策と実行しなければならない。岡山の中山間の国会議員として、地域のために声を大にして発言し、実行していく。
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国政報告をする衆議院外務委員長に就任した阿部俊子氏