岡山県津山市議会の3月定例会が開会した26日、谷口圭三市長が所信表明。快適で住み続けたくなるまちづくり、安心して暮らせる地域共生社会の実現、持続可能な地域内循環経済の構築などに重点を置き、「誰もが輝く拠点都市津山」を築く決意を示した。要旨は次の通り。
【市政運営の基本的な考え方】《快適で楽しい、住み続けたい街を築く》スマートシティ構想を推進し、住民の生活を便利で快適にしていくとともに、まちじゅう博物館構想のアクションプランの実施により、歴史と文化が息づく、憩いの空間を創出する。災害に対するレジリエンスを高め、公共交通の維持・確保や、市内の幹線道路網等の整備を進め、都市基盤を築く。
《安心して暮らせる地域共生の社会を築く》若い世代が結婚・子育ての将来展望を描ける環境をさらに整える。地域包括ケアの仕組みづくりや、健康寿命の延伸にも注力し、高齢者や障害のある方も住み慣れた地域で安心して生活できる環境づくりを推進する。
《持続可能な地域内循環型の経済を築く》「地域内循環型経済」実現のため、地域内サプライチェーンの構築に向け、企業間マッチングなどを推進、新たなビジネスモデルを創出する。「津山城下まちづくりビジョン」による城下地区のまちづくりを進め、中心市街地の賑わい創出と経済活動の活性化を図る。地域脱炭素は、2050年カーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギーの導入などの地球温暖化対策を進め、水素エネルギーの利活用の検討を官民共創で行う。
《教育の充実で未来を切り拓く人材を築く》「GIGAスクール構想」推進、郷土愛の醸成などを通じてより良好な教育環境の整備を進める。確かな学力を定着させるため、授業改善、家庭学習、確認テスト、補充学習等を一体的に取り組む「学びのサイクル」などを推進する。美作大学・津山高専の強みを生かした取り組みを進めることで、時代に応じた「学園都市津山」を実現する。
【新たな津山を築く8つのビジョン】《拠点都市にふさわしい都市機能の整備》災害に対するレジリエンス向上は、浸水被害に対応する「雨水管理総合計画」を策定、優先度の高い地域に対策を施す。「津山市防災ハザードマップ」や「津山市災害情報等配信システム」による情報発信の強化、自主防災組織の育成、消防団の施設・装備の充実を図る。
歴史まちづくりの推進は、まちじゅう博物館構想の実現に向けたアクションプランを策定し、地域一体となった地域資源を活用する施策展開、交流人口増加の核となるスポットづくり、城東・城西地区等の空き家対策、「珈琲のまち津山」を具現化するためのコンテンツづくり、自然や歴史文化を体験するイベント開催などに取り組む。
《安心して子どもを産み育てられる多世代共生の津山へ》保健師等による伴走型相談支援と経済支援を推進し、引き続き不妊・不育治療の助成、昨年度から開始した市独自の「多子世帯応援給付金」を継続実施する。
放課後児童クラブは、利用を希望する全ての児童の受け入れができる体制を目指す。県北に一つしかない児童発達支援センターの機能強化に向けて、重度の身体・知的障害児が身近な地域で必要な療育を受けることができるよう、次年度より定住自立圏事業として取り組む。
健康寿命の延伸は、本年度より南部圏域で開始した「健康長寿はつらつ事業」の対象地域に、東部圏域、加茂・阿波圏域を新たに追加、また、住民が継続的にウォーキング等の健康づくりを行うアプリを活用する。高齢者の居場所づくりについては、「ふらっとカフェ」の開設に向けた助言や相談等を行うとともに、活動支援の補助制度を新設。
障害のある方への支援は高齢化・重度化や「親亡き後」に備え、障害福祉サービス事業者等と連携、地域生活支援拠点の機能を充実させる。
《雇用が安定して定住できる津山へ》雇用促進協定を締結した企業が提供する「Airワーク採用管理」を活用し、世界一の求人検索エンジン「Indeed」に自動掲載することで、地域企業の採用力向上につなげる。雇用につながる人材の創出は、経営者、技術・IT人材などの育成に加え、創業塾や高校生・高専生等の創業意識の醸成、補助制度などにより、社会的課題の解決につながるソーシャルビジネスの創出も図る。
先月発売された移住情報誌では、住みたい田舎の都市ランキングで、本市が若者世代やシニア世代の各部門で全国上位に取り上げられた。「津山ぐらし移住サポートセンター」を拠点としたワンストップの移住相談を進め、空き家の購入・改修費等の助成などきめ細やかな支援を継続する。
《地域産業が発展する津山へ》つやま産業支援センターは、次年度は、生産性向上に注力し、企業内デジタル人材の育成、ICTやロボットの導入など、デジタル化、自動化への投資を後押しする。
農地の集積・集約化や担い手の確保について、従来の「人・農地プラン」に替わり、「地域計画」を策定、新たに10年後の農地利用を示した「目標地図」を作成する。農業生産者の所得向上を目的とする農業ビジネスモデルについて、地域商社「曲辰」を核として引き続き、定住自立圏エリアの農産物の高付加価値化やブランド化、新商品の開発に取り組む。
地域脱炭素は、「脱炭素先行地域」選定に向け全力で挑戦する。エネルギー効率の高い機器や、二酸化炭素の削減設備等の導入を支援する「スマートエネルギー導入補助事業」を拡充し、市内事業者による販売、工事施工等を通じた地域経済の活性化を図る。水素の利活用に関しては、JR西日本が現在進めている水素燃料電池列車のJR津山線への導入の取り組みと連携、水素需要の創出と水素エネルギーの普及・活用を検討していく。
《将来を見据えた人材育成を進める津山へ》本年1月、美作学園より美作大学の公立化に向けた検討を求める要望書が提出された。同大学は地域生活を支える専門人材を育成してきたが、今後、地方都市での私大運営は一層厳しさが増すと予想している。同大学は重要な都市機能の一つであり、慎重に検討したい。
津山高専を含む高等教育機関との連携は本年度より、行政課題や地域課題の解決につながる取り組みに対し、費用の一部を補助。県北地域の教員不足解消や、デジタル技術を活用した道路の劣化診断などの研究が行われており、実践的職業人の育成と、地域への理解と愛着を深めることで、地元に定着する学生が増加するよう支援を続ける。
《多様な教育機会が得られる津山へ》情報教育の推進は、市独自に「ICT活用推進員」を委嘱し、ICTを活用した授業公開や情報提供を広く進める。教育体制の充実は、「小1グッドスタート支援員」を年間配置することで、就学前から小学校1年生への円滑できめ細やかな支援を行うとともに、独自の「業務アシスト員」の継続や、外国籍の児童生徒の増加に伴う日本語指導等担当教員の新たな配置、小学校の学年担任制導入などを進める。
不登校は、学校に行きづらい生徒を対象とする専用教室を4中学校に設置しているが、次年度、さらに1中学校に新設するとともに、不登校生徒に配慮した特別な教育課程を編成する「学びの多様化学校」設置を検討する。
老朽化が進む久米市民プールの更新は、今月策定した「津山市久米総合文化運動公園市民プール整備基本計画」に基づき、公認プール機能を有する施設の更新整備に着手する。
《歴史と文化に誇りを持ち、観光都市として発信する津山へ》昨年の「津山さくらまつり」「津山納涼ごんごまつり」はいずれの来場者数も過去最高を記録。年間で最も多くの観光客が訪れる「春はつやま」の各種イベントに加え、歴史・文化・食・自然等の観光資源の活用や新規イベントの実施、関係団体との連携などにより、観光コンテンツをさらに充実、年間観光入込客数250万人の実現を目指す。
歴史的資源を活用した「城泊・城下町泊」は、まずは津山城の鶴山館、衆楽園の迎賓館と余芳閣などを対象施設とし、コンセッション方式による運営を視野に入れる。この秋に開催される「森の芸術祭晴れの国・岡山」ではメイン会場の一つとなっており、観光資源の掘り起こしや、地域資源の磨き上げを通じたシビックプライドの醸成と地域活力の向上を図る。
《行財政改革を断行し、効率的な行政運営を行う津山へ》本年度の長期財政見通しは、エネルギー価格、物価高騰などの影響はあるものの、最も減少が見込まれる令和12年度末の基金残高は、災害等に最低限対応するための目標額である10億円を確保できる見込み。国の地方財政対策や新たな財政需要などに適切に対応し、健全な財政運営に努める。
民間提案制度による事業として、太陽光発電設備を主とし、LED照明、EVカーなどを複合的に導入する脱炭素化パッケージ事業を実施。電気代の削減による財政負担の軽減に加え、公共施設の脱炭素化を推進する。今後もコンセッション方式や民間提案制度などの手法を活用することで、公共サービスの充実を図り、住民・民間事業者・行政が「三方よし」となる関係を実現し、「活性型の行財政改革日本一」を目指す。
効率的で生産性の高い行政運営の推進に当たっては、デジタル技術による行政サービスを提供できる組織づくりに向け、「津山市デジタル人材育成方針」を策定、BPRを通じた意識改革や、中核を担うDX推進リーダーを育成するなど、総合的な人材育成・確保を図る。
次期総合計画は、現在の第5次総合計画の終期が令和7年度であることから、次年度より住民共創型の新たな手法も用いながら、策定作業に取りかかる。