国道53号沿いにある人気の喫茶店「ハウスヴィレッジ」。店を営むのは、マスターの中田康夫さん(73)ご夫婦。
開店は1981年。もともと和食の料理人だった中田さんは、子育てに適した自然豊かで、妻の故郷でもある岡山県久米郡久米南町に店を構えた。店名には、母の名前にある「里」の一文字をもらい「ハウスヴィレッジ」と名付けた。
ロッジ風の外観は、のどかな里山の風景に溶け込み、初めて訪れる人も優しく迎え入れてくれる。店内に一歩足を踏み入れると、40年以上の時を重ねた観葉植物が出迎え、窓からやわらかな日差しが差し込む。

店の名物は、ボリューム満点の大盛り料理。話題を狙ったわけではない。「おいしいものをお腹いっぱい味わってほしい」という思いを込めて作り続けた結果、自然とその評判が広まった。
もちろん味にも妥協はない。手間を惜しまず、「おいしいと思えるものしか出さない」とマスターは言う。数あるメニューの中でも、カツカレーとカツランチは特に人気だ。
常連客との思い出も多い。国道を行き来する営業マンの中には、担当が代わると挨拶に訪れる人も。「会社の周年でもらった記念品を持ってきてくれる方もいてね」と、うれしそうに語る中田さん。
8時間、店で過ごしていた学生が、のちにアルバイトとして働き、今も交流が続いているというエピソードもある。「一人でゆっくりコーヒーを飲みながら過ごしてほしい」という思いが、こうした人との縁を育んでいる。
東北に移り住んだ元常連客の安否は、今でも気になる。「あの震災の津波のニュースを見てね……」と声を落とす。その言葉からは、ただの飲食店ではない、深い人間関係がこの場所にはあることが伝わってくる。
近年は原材料費の高騰により、大盛りには追加料金をお願いするようになった。それでも「普通サイズでも十分お腹いっぱいになるはず。そこまではうちが頑張りますので、あとはお客さんに助けてもらえたら」と冗談めかして笑う。
気持ちのこもった料理と、心地よい空間。心も体も満たされる場所が、ここにはある。
問い合わせ 0867-28-3295 住所 岡山県久米郡久米南町上弓削1011

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