施政方針演説

行政・公共 施政方針演説
         

 谷口圭三津山市長は3月定例市議会初日の1日、施政方針演説を行った。任期最終年度となる2021年度に臨み、「新型コロナウイルスへの的確な対応はもとより、第5次総合計画中期実施計画に掲げる施策を民間活力の導入など新しい手法を積極的に取り入れながら着実に推し進め、持続可能な地域社会が確立できるよう任期の総仕上げを行う」と決意を述べた。公民連携を主眼に置いた「活性型の行財政改革日本一」を目指すことも表明した。要旨は次の通り。
 【市政運営の基本的な考え方】
 《新型コロナウイルス感染症対策》2月1日にワクチン接種推進室を設置し、65歳以上の高齢者、続いて高齢者以外を対象として順次接種を開始する。感染拡大を封じ込めるため、津山圏域定住自立圏の各町とも連携を強化し、生活圏を意識した感染防止対策に取り組む。アフターコロナを見据えた地域経済の回復に向けては地域循環型の経済への転換と「新たな日常」への対応の促進を図るとともに、デジタル化の推進や人材育成に注力する。
 《財政再建の断行と経済活性化》財政構造改革は、感染症の影響による経済情勢からも厳しさを増しているが、持続可能な行財政運営、地域社会の確立を目指すには着実に推し進めていかなければならない。21年度予算は感染症の影響により法人市民税をはじめとする市税の減収が見込まれるなど極めて厳しい状況の中で、既存事業の目的、実績や効果を徹底的に検証し、事業の重点化、統廃合、民間活力の導入検討などを実施。財政構造改革の取組強化期間の2年目であることから、一般財源ベースでゼロシーリングとして取り組んだ。
 デジタルやグリーンなど今後成長が見込まれる分野の産業を市の経済成長に取り込むとともに地域外から稼ぐ力を高め、地域内の経済循環を活発にするため各分野との連携を強化し、より効果的な地域創生に取り組む。
 産業支援ではDX社会に対応するため、ICT関連企業で組織する「ICTコネクト」を中心に企業間連携を進め、デジタル技術を活用した新たなシステムや仕組みづくりを行うとともに、地元企業との共同研究の場として、津山高専に5G環境を整備した「Iotラボ」を設置し、技術革新、新技術・新製品開発を支援する。
 《少子高齢化の抜本対策》雇用の確保、出会いの場の創出など結婚ができる環境の整備をはじめ、不妊不育治療の支援などにより出生者数の増加に努める。若者の流出を食い止めるとともに地域への呼び込みを図るため、新規学卒者の地域内就職の促進に取り組むほか、感染症の影響による地方移住や地元回帰の志向の高まりなどの社会情勢を踏まえ、移住・定住対策をさらに推進する。
 《将来を見据えた人材育成》子どもたちが社会の中で自信と誇りを持って歩んでいけるよう「教育大綱」を改定した。来年度からは教育施策の基本的方向性を示す教育振興基本計画の改定作業を進める。小中学校での新しい授業づくりは、5GやVRなどの先進技術を活用したNTT西日本とNTTドコモとの共同実証を通じて主体的に学び、地域や社会に貢献できる人材の育成に注力する。
 【2021年度の主要な施策】
 《都市機能の整備》空港津山道路は南北軸の要であり、全線の早期事業化が求められている。その実現には北側からの津山南道路に加え、南側からの整備も重要と考えており、調査区間である岡山市北区菅野から御津宇垣間が整備区間へ格上げとなるよう沿線自治体と連携し、国、県に働きかけを行っていく。
 津山駅の環境整備には、送迎時の混雑緩和のための待機スペースの改良など施設利用の利便性が向上するよう、関係機関と連携しながら改善を図っていく。跨線橋のエレベーター設置などのバリアフリー化は利便性や安全性の向上を図るため、今年度着手した調査設計を終え、来年度は仮設工事に着手し、完成は22年度となる。
 城西地区が重要伝統的建造物群保存地区に選定され、県内初の二つの重伝建地区を持つ自治体となり、博物館都市に向け、一歩前進した。城下、城東、城西地区の町並みや衆楽園、旧津山扇形機関車庫、津山高校本館といった施設や建築物の貴重な資源を生かし、まち全体を博物館として一体的なまちづくりを進める。
 中心市街地活性化協議会による調査、活動を支援し、今後のまちづくりの方向性を固めていく。昨年12月にUR都市機構と「まちづくりの推進に関する基本協定」を締結し、旧関家跡の活用策の検討や周辺文化施設との連携などを含め、城下地区のエリアビジョン策定に取り組む。
 今津屋橋からザ・シロヤマテラス津山別邸までの鶴山通り沿線の整備は、にぎわいの創出やまちづくりの観点からこのエリアを重点地域として位置付け、建物の改修、除却などを支援し、市の玄関口の景観形成を図る。
 公共交通は感染症の拡大により大きな影響を受けているが、引き続き維持確保や利便性・快適性の向上を図り、利用者増加を目指す。鉄道の利用促進については、津山駅以外の市内駅での定期利用を促すため、新たに駅周辺駐車場使用料の一部助成を制度化し、利用向上に努める。
 光ファイバ網は公設区域となっている加茂・阿波地区の更新を当初計画を2年早めて実施し、民間の整備と併せ22年度中の市内全域の整備完成を図る。
 高等教育機関は都市の拠点性を維持するためにも不可欠。有識者会議の報告書を参考にし、高等教育機関のあり方について高等教育機関連携室を設け、美作学園の協力も得ながら検討を進めていく。
 《安心して子どもを産み育てられる多世代共生》不妊治療支援は、これまでに特定不妊治療の助成回数の増加や、市独自事業として一般不妊治療に対する助成制度を創設するなど拡充を行っている。特定不妊治療では妊娠に至る件数が18年度の27件から19年度には41件に増加。不育治療においても市独自事業として実施し、出産につながっている。今後も不妊不育に悩む夫婦が安心して治療に臨めるよう支援を行う。
 来年度からモデル事業として、市内中心部の生活困窮家庭の中学生を対象に学習支援や居場所づくりを行うとともに、保護者に対する学習の重要性の理解を促す支援を行い、子どもの将来の自立を後押しする。
 来月1日から県北初の「配偶者暴力相談支援センター」を開設し、被害者への相談体制を強化し、DV被害の防止に努める。
 高齢者施策は、「第8期市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」に基づき、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、地域全体で支える取り組みを一層推進していく。障害のある人に対しては地域生活支援拠点の機能充実や、障害のある子どもの通所支援体制の整備に努める。手話言語条例に基づき、手話などによる意思疎通の支援や普及を進める。
 《雇用安定と定住》津山産業・流通センターと久米産業団地では、就任後6社との立地協定締結に至り、立地率はともに約8割、立地企業数は合わせて64社となった。私自身が先頭に立ち、県や関係機関と連携し企業誘致活動を推進していく。
 移住・定住は、「津山ぐらし移住サポートセンター」を拠点としたトータルサポート体制をさらに充実させるとともに、オンラインによる相談会など新たな手法を取り入れながら効果的な事業推進を図る。空き家の購入・改修、家賃などに対する補助の予算を増額し、積極的に働きかける。
 《地域産業の発展》つやま産業支援センターでは地元企業、NTT西日本とNTTドコモ、津山高専と連携し「ICTの利用促進」「地域産業の事業継続力強化」「新商流に向けた地域サプライチェーンの構築」を中核に事業展開を図る。「Made In Tsuyama」を木材加工業にも広げ、新たなブランド化を進めるとともに新技術・新製品開発支援を行い、木材の高品質化に取り組む。
 昨年10月に設立した地域商社「曲辰(かねたつ)」を核としてエリアの農産物の販売を拡大するため、戦略的な販路の開拓と確保、大学などと連携して取り組む商品開発や、農産加工品の高付加価値化などを進める。
 つやま和牛のブランド化を加速させるため、将来的に200頭、月平均10頭の出荷規模を目標とし、まずは来年度40頭分を増額し、月平均5頭を7頭に引き上げる。
 《将来を見据えた人材育成》津山まちなかカレッジでは、社会人のスキルアップ、女性やシニアの就業支援など、子どもから大人までが生涯にわたって学ぶことができるよう、コンテンツの充実と拡充を図る。
 職員の育成では国や県への派遣を行うとともに民間企業への研修も取り入れ、資質や能力の向上を図っている。今後も職員派遣を継続し、市の将来を支える職員の育成に努める。
 《多様な教育機会》教育ICT環境整備として今年度整備した児童生徒1人1台の端末を活用し、個別最適化された学びと次世代に求められるICTを活用した主体的・対話的で深い学びを推進する。
 東京学芸大学との共同研究では、AIや5Gなどの先進技術を活用し、基礎学力定着に向けた読解力の育成や、主体的な学びにつながる授業展開、質の高い遠隔教育の仕組みなどについて、東小学校と津山西中学校を中心に実践研究に取り組む。
 小中学校の一貫した外国語教育を推進するため、小学校には市独自の英語教科支援員を継続配置するとともに、中学校には新たに英語指導専門講師を招へいし、教員の指導力向上を図るなどグローバル化に対応した外国語教育の充実に努める。
 プロスポーツの大会の開催、活動を支援することで地域の活性化に取り組む。市スポーツ大会・合宿誘致事業補助制度の周知を図るとともに、サッカー、野球、卓球などの大会やニュースポーツの教室などを行い、交流人口の増加や競技力の向上などを図っていく。
 オリンピック聖火リレーやパラリンピック聖火の採火式などさまざまなイベントを行う。ホストタウン交流として、モナコ公国の選手や関係者へのおもてなし料理の提供を予定し、スポーツ振興や国際交流を促進したい。
 《歴史と文化に誇りを持ち、観光都市として発信》市の認知度を全国的に高めるため、「春はつやま」として観光誘客の促進に力を入れる。
 城東と城西の二つの重伝建地区については修理・修景による町並みの復元を加速し行う。城西地区では重伝建選定記念事業を「城西まるごと博物館フェア」に合わせて行い、城西地区の新たなまちづくりをスタートさせる。
 洋学をキーワードとした新たなシティプロモーションとして、同様な歴史を有する市町村に呼びかけを行い、自治体間での連携関係を構築したい。これを活用した情報発信をはじめ、共同で事業を実施するなど、「洋学のまち津山」の知名度向上を図っていく。
 近代化遺産を生かすまちづくりを実行している全国の自治体や研究者が集まり、「全国近代化遺産活用連絡協議会津山大会」を8月に開催し、津山の歴史資産を全国に発信する。
 《行財政改革の断行、効率的な行政運営》「第10次行財政改革大綱」の次の5年間の基本方針「行財政改革運営指針」、併せて健全な行財政運営、職員の意識改革、行政資源の最適化に向けて具体的な取り組み事項を盛り込んだ実行計画を策定する。
 「公共施設マネジメント基本方針」にランニングコストの削減を新たな目標として加え、これまで以上に財政効果の高いFM施策を進めていく。民間活力の導入は、提案制度によって旧高田幼稚園を活用した「複合施設たかたようちえん」がオープンしたほか、旧東幼稚園、旧田邑幼稚園で事業を進める。市道などの街路灯の一斉LED化を実施する。
 グラスハウスはRO方式とコンセッションを合わせたPFI手法により、施設リノベーションを行った上で独立採算での運営を行う公民連携による収益事業への転換を目指す。
 デジタル化への対応は、「みらい戦略プロジェクトチーム」の研究成果として今月、「デジタル社会の推進に向けた取組方針」を取りまとめる。住民生活の利便性を高め、行政運営の簡素化・効率化を図っていく。
 《終わりに》行財政改革の推進については、減量型の取り組みにとどまらず、公民連携を主眼に置いた「活性型の行財政改革日本一」を目指し、その歩みを進めていく。
 国際目標であるSDGsが掲げる目標の達成にも資するよう第2期総合戦略の見直しを行い、取り組みの推進を図る。まちに愛情と誇りを持った選択と行動をすることにより、地域の経済に好循環を生もうとする「ローカルファースト」の視点に立ったまちづくり・地域づくりにも取り組む。
 感染症の拡大で顕在化した社会的な課題や様々な困難を克服するためには、今こそ住民が一丸となって立ち向かっていかなければならない時。ふるさと津山が将来の世代にわたって愛され、発展していくことを願う全ての住民の思いを一身に受け止め、一つにつなぎ合わせるために全身全霊を捧げ、明るい津山の未来の創造に向け「剛毅果断」に取り組んでいく。


任期最終年度に向け、施政方針を述べる谷口市長


>津山・岡山県北の今を読むなら

津山・岡山県北の今を読むなら

岡山県北(津山市、真庭市、美作市、鏡野町、勝央町、奈義町、久米南町、美咲町、新庄村、西粟倉村)を中心に日刊発行している夕刊紙です。 津山朝日新聞は、感動あふれる紙面を作り、人々が幸せな笑顔と希望に満ちた生活を過ごせるように東奔西走し、地域の活性化へ微力を尽くしております。

CTR IMG