「ザ・作州人 谷口博章さん」 “二刀流”での活躍 台湾でも能登半島地震支援コンサート/岡山・津山市 

ザ・作州人 ピアニスト谷口博章さん
ピアニスト谷口博章さん
         

作州人七十二

 ◎音楽の力で心の復興を

ピアニスト谷口博章さん

 今回の「ザ・作州人」は兵庫県西宮市の要職に就きながらピアニストとしても活躍する”二刀流”の谷口博章さん(53)に登場してもらった。東日本大震災後、10年以上にわたって宮城県南三陸町の支援活動を展開。2018年に脳こうそくに襲われたが、復活を果たし、今年4月には台湾でも能登半島地震支援コンサートを開く。

 穏やかな表情に谷口さんの誠実な人柄がにじむ。差し出された名刺は2枚。甲子園球場が印刷された1枚は「西宮市政策局市長室室長」とあり、もう1枚には「ピアニスト」とあった。

 「音楽の力を信じ、恩返しをしたいという思いで続けて来ました。いま自分ができることをすることで、みなさんの心の癒やしにつながればと思います」

 チャリティー活動のきっかけは11年の東日本大震災で西宮市から先発隊として南三陸町に派遣されたこと。自身も入庁して間もない1995年に阪神・淡路大震災を経験しており、広報業務や秘書業務を担当し被災地をサポートした。

 「阪神・淡路大震災では全国の自治体やボランティアの方々に助けていただきました。実をいうと私はそのとき、何もできなくて…。そのお返しがしたかった」

 公務員として2週間の任務を終えた最終日。1人残された谷口さんは「自分にできることはこれ」と迷いを振り切り、2カ所の避難所で4曲ずつのミニコンサートを開く。すると町民から「こんなすばらしい音楽を聴けるとは…」と涙ながらに感謝された。

 そこからは毎年のように南三陸町を訪問し、地元の小中学生と交流。さらに西宮市や出身地の津山市、パリなどでチャリティーコンサートを開催してきた。

 20年3月10日には園児のために、何と愛用のグランドピアノを南三陸町に寄贈。コロナ禍で活動が制限されると、21年にはCD「南三陸に捧げる音」を制作し、販売経費を除いた売り上げを寄付している。その中には11年の派遣時に避難所で披露したショパンの「ノクターン」、リストの「コンソレーション」など9曲が収録されている。

 そんなハートフルな谷口さんがピアノを始めたのは5歳のときだった。津山高、関西学院大在学中も学業のかたわら研さんを積み、35歳となった05年にはパリ・エコール・ノルマル音楽院の卒業資格を取得。17年には米国で開かれた「第15回ワシントン国際ピアノアーティストコンクール」で1位、聴衆賞、プレス審査員賞の主要3賞を独占した。

 「大きな夢がかなった瞬間でもありました」

 しかし、好事魔多しというか、なんというか。18年11月、脳こうそくに襲われる。幸い、重症にはいたらなかったものの、後遺症は指先にも残り、リハビリの日々が続いた。

 支えになったのは南三陸の風景と町民の笑顔。それと谷口さんの持つ粘り強さだったか。家族の支えもあり、運良く回復。わずか半年後にコンサートを開くことができた。

 「いまできる最善のことをやろうと思い、それがCD制作にもつながりました。支援の輪が少しでも広がってもらえれば」

 さらに、昨年11月から台湾まで出向いて鍼治療。それが縁となり、4月28日に嘉義県立芸術センターで能登半島地震被災地支援チャリティコンサートを開催することになった。おそらく、谷口さんの取り組みが助け合いの精神にあふれた台湾の人々の心に響いたのだろう。

 また3月24日には津山市新魚町のベルフォーレ津山で開かれるコンサートに出演。谷口さんは「ベルフォーレは響きが良くて素晴らしい会場。今後は津山の音楽レベルや文化向上にも貢献できれば」と話している。

 なお、CDはAmazonで販売中。税込み1500円。問い合わせはhiroaki.taniguchi0515@gmail.com

    (山本智行)

 ◇谷口博章(たにぐち・ひろあき)1970年5月15日生まれの53歳。津山高、関西学院大と進み、兵庫県西宮市役所に入庁。ピアノは5歳から始め、国内外のコンクールで入賞。2011年震災支援のため、宮城県南三陸町に派遣されたことをきっかけにチャリティー活動を本格化させる。


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