今月の 「ザ・作州人」 は日本を代表するプロダンサーの野村直人さん(31)に登場していただいた。 山﨑かりんさんとペアを組み、 競技ダンスのラテン部門で国内3連覇中。 この10月に千葉・幕張メッセで開催される世界選手権でファイナリスト入りを目指している。 高校まではサッカー一筋。 岡山県津山市出身で 「サッカー」 「野村」 と言えば、 ピンとくる人が多いかもしれない。
天は二物も三物も与えたようだ。 キレッキレのステップとダイナミックな身のこなしは見る者をうならせる。 もちろん、 高身長でルックス抜群。 しゃべりも実に丁寧でスマートだ。
「最近、 自分たちの踊りが進化し、 成長速度がアップしているのを感じます。 結果は人が決めるものですが、 感動を与えたいという思いが一番。 競技ダンスの素晴らしさを伝えたいです」
野村さんがこう話す競技ダンスは社交ダンスを芸術的スポーツに高めたもので男女がペアとなり、 テクニックや表現力を競う。 種類はスタンダードとラテンアメリカンに分かれ、 優雅なスタンダードに対し、 ラテンはアップテンポで情熱的なのが特徴。 ルンバ、 チャチャ、 サンバ、 パソドブレ、 ジャイブの5種目から構成される。
野村さんは現在、 この部門の第一人者。 22年から競技ダンス日本一を決めるJBDF統一全日本チャンピオン大会を3連覇中だ。 ただし、 始めたのは大学入学後。 新入生歓迎のダンスパーティーで、 ある先輩の全力で踊る姿に圧倒されたことがきっかけだった。
「ごく普通の大学生と思っていたらまるで別人。 音と光の中、 キラキラの衣装を着て輝いて見えました。 その瞬間、 これだ!と思いました」
そこからは厳しい練習にも耐え、 1年生で初めて出場した大会で優勝。 「周りが喜んでくれているのがうれしかった」。 4年生のときに大学全日本チャンピオンになったことでプロを目指し、 2016年に別の大学でライバル関係にあった山﨑さんとペアを結成。 いまに至る。
ふだん2人は午前中スタジオで練習。 その後、 夜10時までダンス教室でレッスンし、 それから再び深夜まで練習を繰り返しており、 今回の取材も忙しい合間を縫ってのものだった。 その一方で1年の半分は本場イギリスやアメリカなど海外へ転戦。 今年6月のロシア大会では準優勝という快挙を成し遂げた。
そんな野村さん、 実はサッカー一家に生まれ育った。 「父も母も妹も、 母の兄弟や祖母までサッカーをやっていたんです」 と言うほどの筋金入り。 ここでピンと来て、 もしやと尋ねると、 やはり野村さんの父は作陽高を何度も全国大会に導いた名将の雅之さんだった。
「父からはひとつ先の展開を読み、 よく考えて行動しろと教えられた」 と野村さん。 津山FCから津山高までゴールキーパーを務めていたそうで、 それが強靱 (きょうじん) な肉体の土台となり、 ダンスにもいかされているという。
「海外の選手は子どものころから踊っていますが、 わたしの強みはサッカーをやっていたこと。 視野の広さには自信がありますし、 たとえ2人でもチームワークが大切なこと、 パートナーを敬う気持ちを常に持ち続けています」
その野村組が今年最大の目標としているのが20年ぶりに日本で開催される最高峰のWDC世界選手権でファイナリスト入りすることだ。 もし実現すれば、 日本人として40年ぶりという快挙となる。
「世界選手権に出場するのは今回で4回目。 自分たちらしい踊りで結果を出し、 競技ダンスをメジャーにしたいです」
昨年10月には地元の鶴山ホテルで凱旋 (がいせん) 公演をしている。 そこで津山にいる少年少女へのメッセージを求めると 「何事にも探究心を持ち、 競技に関係なく表現者でいてほしい。 毎日のルーティンが大切です」 と話してくれた。
すでに伝道師のようだが、 負けん気は人一倍。 世界の頂へ、 チャレンジャーであり続ける。
(山本 智行)
◆野村直人 (のむら・なおと) 1993年8月25日生まれ。 津山高まではサッカー部。 首都大学東京で 「競技ダンス」 を始め、 2016年に山﨑かりんさんとペアを組み、 JBDFプロデビュー。 22年から3年連続で統一全日本チャンピオンに輝き、 24年には国内3大大会制覇。 クワバラダンススクール所属。 182センチ。
