新型コロナウイルスの感染が国内外で拡大する現状を日々見聞きしていると、市内で感染者が確認された状況に対して危険が迫りくるかのように感じるのは自然なことかもしれない。ただ、過剰な反応は社会不安を増幅させる恐れがある。
感染者に関して、多くの憶測が独り歩きした。本人の名誉を傷付けかねない内容もいくつもあった。
家族が学校関係者という話まで出て、心配になった保護者たちが市教委などに問い合わせる事態にも発展している。根も葉もないうわさに振り回されたと考えると、発信源になった人の責任は重いといえる。鵜呑みにして流布した人も見つめ直すべきだろう。
ウイルスから自身や周囲の人の身を守りたいという心理が、これらの言動につながった可能性はあるが、真偽不明の情報は何ら意味を持ち得ず、ましてや誹謗(ひぼう)中傷については、何一つとして正当性のある目的が見当たらない。
最も懸念しているのは、それが結果として足手まといになってしまう状況だ。
山梨県では、帰省していた女性が陽性判明前に東京都の自宅に戻ったとの虚偽の説明をしたことをめぐり、個人名や顔写真まで特定しようとする動きが過熱している。今の情勢を顧みない行動が怒りを買ったとみられるが、行き過ぎた非難は正直な申告を減らし、感染拡大防止の支障になりうると指摘される。
経済的影響を抑えようという中で、社長が感染したとの嘘を流されて利益が減少した企業もあるという。
スマホやSNSの発達で簡単に情報を交換したり得たりできるようになれば、真意を見極める目は一層必要とされる。冷静な行動が求められる現在はなおさらだ。
デマについて 所感
- 2020年5月11日
- 医療・福祉