美術家・甲田千晴さん(38)=美作市栄町=の作品展「ふたつの窓」が川崎のポート・アート&デザイン津山で開かれ、幼少期の記憶をテーマにしたインスタレーション(空間芸術)に来館者が見入っている。22日まで。
甲田さんは、県立大学デザイン学部、ドイツ国立カールスルーエ美術大学彫刻科を経て制作を続け2008年、郷土の若手美術家育成を目指す「I氏賞」奨励賞を受賞。今回は、幼いころ祖父母宅で入ったまき風呂から想起した新作を展示した。
風呂場で味わった「熱気と冷気の入り混ざる不思議な感覚」を、小窓に見立てたドラム缶を置いた二つの展示室に表現。片方は風呂に引水する貯水槽のある「熱気」の空間で、陽光が差し込む中につるした縄のブランコが郷愁を漂わせ、ドラム缶の底は暗闇になっている。もう一室は風呂場の「冷気」の空間で、闇に包まれた中、貯水槽につながる「窓」のドラム缶から温かな光が漏れている。
さらに中庭には、風呂の湯を可視化するために実際の浴槽で固めた寒天が崩して置かれ、様々な印象を投げかける。
兵庫県姫路市の主婦・小林俊子さん(65)は「レンガ造りのレトロな内装と相まって、この場にずっといたくなるような懐かしい感覚に包まれた」と話していた。
「視覚だけでなく音、匂いなど五感で私の記憶の物語を感じてほしい。固定観念を捨て、視点を変えてアートを見るきっかけにもなれば」と甲田さん。
同展は県の芸術文化育成・支援事業の一環で、画家・花房沙也香さん(32)=奈義町中島西=の作品も併設。
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幼少期の記憶を表現したインスタレーションに見入る来場者
ポート津山で甲田千晴展示会