関西を代表する画家、佐川晃司さん=京都市=と安喜万佐子さん=同=による絵画展「想起のかたち」が、岡山県奈義町豊沢の町現代美術館で開かれている。「風景」を共通のモチーフに、異なる視線とアプローチから捉えた作品の”競演”が来館者を魅了している。9月10日まで。
ともに岡山では初の作品展となる。佐川さんは日常風景と知覚の関係を考察し、絵画表現の可能性を本質的に問う。安喜さんは東洋と西洋の技法を取り入れ、風景の記憶や時間を切り口に独特のスタンスで制作している。
高さ2.2メートル、幅3.3メートルの大作など27点を展示。「樹塊」をテーマにした佐川さんの作品は、平面にシンプルな多角形を組み合わせ、幾重にも塗り重ねた深い色調が目を引く。見る人の感覚に多角的なイメージで迫り、筆を運んだ跡から作者の心境も伝わってくる。
安喜さんは、「網膜の雪」など、訪ねた街の風景などをぼやかしながら緻(ち)密に描写。場所の記憶と時間の痕跡などを画面にとどめ、どこかで見たような懐かしい景色の記憶を想起させてくれる。
高校時代の同級生という40歳の女性3人は「公園の入り口や木漏れ日など、子どものころの思い出がよみがええる」と熱心に観賞していた。