岡山県津山市の美作高校サッカー部の監督に本年度、同県倉敷市に移転した作陽高校(作陽学園高校)のサッカー部指導者で、フットサル部を率いて全国優勝の実績がある三好達也氏(34)が就任した。全国的に知られる強豪校で培った経験を生かし、選手の能力を引き出すとともに人間力を磨く。「地元でサッカーをしたい子どもたちの受け皿となり、県北地域を引っ張るチームに育てたい」と情熱を燃やしている。
作陽高校で全日本ユース優勝
大阪市出身で、2011年から今年3月まで作陽高校に勤務。部員150人を擁する男子サッカー部のコーチとして選手を育成してきた。2015年度にフットサル部監督として全日本ユースで優勝、18年度には社会人も参加する全日本選手権に高校チームとして21年ぶりの出場を果たした。日本最高峰・Fリーグのクラブからプロコーチの声がかかるなど、その指導力は高く評価されている。
この春、作陽は移転したが、自身は津山に残ることを選択。そこには作陽に勤務を始めたころ、サッカーを通じた地域活性化を掲げる野村雅之総監督(現・作陽学園高校長)から投げかけられた言葉が根底にある。「君の価値は何か」。また、社会福祉法人「日本原荘」の理事長を務める義父・福原文徳さんと地域について語り合ってきたこともあり、「津山に残ってできることがある。それが自分の価値」と決意した。
美作高校に英語科教員として採用され、下山雅司監督(元ファジアーノ岡山アカデミーダイレクター)の後を引き継いだ。ゴールキーパーコーチも新たに加わり、強化を進める。部員は29人。全員が岡山県北から集まっており、クラブチームより中体連出身者の方が多い。県リーグ3部に相当するチャレンジリーグ1部に所属している。
「地域、学校の看板となるチームに」
「地域、学校の看板となるチーム」をビジョンに掲げ、練習を開始した。野村総監督がロジック(理論)でサッカーを構築してきたように、自ら作った「教科書」を基に技術をはじめ、チームや人としてのあり方などを部員たちに伝えていく。作陽時代と同様、あいさつや感謝の気持ち、礼節を含め対話を重視しながら個々の成長を促す。「この子たちには、のびしろしかない」。週1日はフットサルの練習を行ってスキルを磨く。
就任早々、自身が持つコネクションを生かして県南の強豪校の玉野光南、全国選手権優勝の岡山学芸館との練習試合を組んだ。選手たちは県内トップレベルを肌で感じ、貴重な経験を積んだ。
今月13、14日には美作総体を迎える。部員たちは「美作総体初優勝」「県総体ベスト4」を目標に決めた。DF川口巧真主将(17)=3年=は「三好先生から、ボールを保持しながらの攻撃など細かいプレーを教わり、個々の技術が上がっている。全員の意識が高くなっており、一つになって勝ち上がりたい」と意気込む。
期待高まる「背負うもの大きいほど強く」
三好監督は「早瀬直紀校長をはじめ同僚のサポートがあって、サッカーに力を注ぐことができている」と感謝を示す。作陽移転でサッカーに限らず美作高校への地域の期待が高まる中、「背負うものが大きいほど強くなれる。周囲から求められることに対し、私学だからこそできるサービスで応え、地域から応援され、選んでもらえるチームづくりを進める」と強調。「今後はサッカー教室も開き、地域のサッカーやスポーツ人口の増加につなげたい」と力を込めた。
みよし・たつや 1988年生まれ。日本サッカー協会(JFA)公認C級ライセンス、フットサルB級ライセンス取得。2児の父で、趣味は子どもと弾くピアノ、自分で作った料理をSNSにアップすること。