岡山県真庭市が寄贈を受けた同市勝山出身の画家・故難波香久三さんの作品を集めた展覧会「人の世をまなざす」が勝山文化往来館ひしおで始まった。シュールレアリスム(超現実主義)の影響を受けた意欲作が来館者たちの目を引き付けている。12月24日まで。
難波さん(1911〜96)は、関西大学夜間部を卒業後、多くの洋画家を輩出した「中之島洋画研究所」で研さんを積む。戦前は芸術家・岡本太郎さんや吉原治良さんらが立ち上げた「九室会」に参加し、そこで高い評価を得るなどして活躍。戦後は教員をしながら出品を続け、退職後も85歳で亡くなるまで意欲的に活動してきた。
23日、娘の難波堯子さんと矢澤依子さんが文化振興などに役立ててほしいと、保管していた約280点を寄贈。今回そのうち33点を展示している。
「情念や想念を物語る絵画」を模索し、社会批判的な要素を持ちつつも、人間を慈しむ作風を展開してきた難波さん。会場には世の中の矛盾や不正をユーモラスに描いた快作のほか、故郷や日本各所の風景美をとらえた気韻生動の秀作も並ぶ。
細部までじっくりと眺めていた宗平純子さん(76)=真庭市久世=は「写実的で繊細なのもあれば、大胆で斬新なのもあっておもしろい。作品に込められたメッセージについて考えさせられる」と話していた。
真庭市は寄贈を受けた作品は、市内で管理・保管し、活用していくとしている。