アマ将棋史上、最年少の永世名人誕生―。岡山県津山市にある津山高専1年の土山泰輝名人(15)=同県美咲町=と、公務員で実力者の橋本圭司三段(32)=同県美作市=のどちらが名人位を獲得するかと、将棋愛好家の注目を集めていた「第72期美作アマ将棋名人戦」(津山朝日新聞社主催、日本将棋連盟津山支部主管)は7月30日、津山キッズ将棋教室を会場に三番勝負で行われた。3局までもつれる大激戦の末、土山名人が逆転勝利をおさめて防衛。名人位を3期連続手にし、過去の記録を4歳更新する最年少で7人目の永世名人となった。
タイトルの行方を大きく左右する第1局は午前9時半、振り駒により土山名人の先手でスタート。土山名人の中飛車に対し、後手の橋本三段は三間飛車を採用し相振り飛車戦の力戦になった。
序盤から積極的な駒組みを目指した橋本三段だが6筋の歩の突き越しがやや差しすぎで、自然に対応した土山名人が手得となり作戦勝ちに。中盤は優勢を意識した土山名人が、さらにポイントを上げようと目指した駒の組み換えにすきが生まれ、そのすきを見逃さなかった橋本三段が機敏に仕掛けて逆転に成功。落ちついた指しまわしで懸命に粘る土山名人を投了に追い込んで快勝した。2時間10分、136手。
第2局は正午から橋本三段の先手で開始。橋本三段の三間飛車に対し、後手の土山名人は中飛車・左穴熊で対抗。両者ともに金銀4枚の穴熊の堅陣を築き上げ、大駒のさばきが勝負のカギとなるが、土山名人側に手段が多い展開となり、名人が優勢に。中盤から終盤にかけて劣勢の橋本三段は攻防の角を放ち、一手争いの激戦となるが、模様の良かった土山名人が正確な速度計算できっちりと一手勝ちをおさめ、1勝1敗のタイに持ち込んだ。1時間半、106手。
あらためて振り駒が行われ、先手番となった土山名人が前の対局同様に中飛車・左穴熊、対して橋本三段は向い飛車・美濃囲いで対抗。中盤にさしかかると、穴熊の堅陣を完成させた土山名人が猛攻を開始するが、橋本三段も粘り強く対応して優劣不明の難解な展開に。一手指した方が優勢に見えるほどの一進一退が繰り広げられる中で、穴熊の堅陣を生かして攻めに専念できた土山名人が最後の最後にペースをつかみ、終盤戦は橋本三段が巧妙に受けきれたようにも見えた展開であったが、中盤戦から延々と続く秒読みの中、最後は力尽きた。両者の持ち味が存分に発揮された名局であった。1時間56分、115手。
3局ともに中盤から秒読みに突入するほどの近年まれにみる激闘で、合計5時間34分のまさに死闘であった。
土山名人はこれまでの18歳という永世名人の最年少記録を塗り替えた。対局終了後、本社と同連盟津山支部から賞状や盾、記念品が両者に贈られ、好勝負をたたえた。
土山名人の話 1局目はミスがでた。気持ちを切り替え2局からは作戦通りいい将棋が指せた。永世名人になれてうれしい。
橋本三段の話 1局目を勝ちチャンスがあるかと思ったが土山名人は強かった。疲れた。来期も名人に挑戦できるよう精進したい。