県の重要有形民俗文化財に指定されている松神神社歌舞伎舞台=岡山県奈義町中島東=で14日、地域住民たちによる「横仙歌舞伎」(県重要無形民俗文化財)の公演が行われ、観衆約300人が江戸時代から伝わる「地下芝居」の魅力を堪能した。
創建から177年間、大切に守られてきた舞台が今年9月に改修を終えたのに加え、コロナ禍などの理由で見送っていた「松神館」(2020年完成)のお披露目も記念して中島東地区歌舞伎公演実行委が主催。有志たちでつくる「中島東松神座」のメンバーと地域の子どもら計19人が熱演した。
演目「弁天娘女男白波(白浪五人男)稲瀬川勢揃いの場」では、主役の日本駄右衛門ら盗賊団を務める中学生5人が番傘を手に一人ひとりかっこよく見えを切り、負けじと捕っ手にふんする小学生と園児らが元気よく応えた。続く「御所桜堀川夜討弁慶上使の段」では、床に施された仕掛け「回り舞台」が動いて場面が早変わり。役者の真に迫る演技とともに会場を沸かせた。
岡山市から来た吉田彰さん(81)と妻の美根さん(76)は「近くで演技が見られて、迫力があっておもしろかった」。「地域のみんなが力を合わせて舞台をつくる熱意が伝わり、心を震わせた」と話した。演者として初参加の倉内心春ちゃん(6)は「緊張したけど、喜んでくれてうれしい」。母親の恵さん(33)は「祖父がファンだったので出演できたのは感慨深い。続けて参加し、みなさんと伝統を守っていきたい」と述べていた。
同舞台は1846(弘化3)年、同所の王子権現境内で建てられ、1921(大正10)年に松神神社の境内に移築された。