城下町で愛された老舗とんかつ店の味と賑わいをもう一度―。日本100名城に選ばれている岡山県津山市の津山城近くの路地に、昼になるといつも行列ができるとんかつ店があった。その名は、「とん㐂(とんき)」という。元フランス料理のシェフだった店主が、故郷で働くことを希望し、初代から店と味を引き継ぎ、夫婦二人で切り盛り。1986年以来多くのファンに愛されてきたが、昨年10月に惜しまれながら閉店した。その後、ファンの声に応えようと店主の甥らがこの味を忠実に再現し、7日から店舗が復活することになった。
手を挙げたのは店主の甥で同市在住の真木祐治さん(40)が共同出資者に名を連ねる「株式会社明優(めいゆう)」。馴染みのロゴマークと店名も受け継いだ。
「多くの人たちが好きでいてくれたお店です。おいしいだけでなく、とん㐂(き)のファンの方の期待を裏切らないように、味にこだわっています」と真木さん。
店はかつてあった路地から離れ、まちの中心にある商店街に構えた。大きな銅版とロゴマークが目をひく外観。内装は広葉樹のナラ材と針葉樹のヒノキ材をふんだんに使った、あたたかみを感じられる料亭のようなたたずまい。68平方メートルをぜいたくに使い、ゆったりと座れる8人がけのカウンターをしつらえた。畳スペースには2人用のテーブルが4台。
以前、人気だったシソ巻きは「叔父にも協力してもらい、味の再現はできています。ただ、オペレーションにもう少し時間がかかりそうです」。名物かつカレーは「味の再現がかなり難しく、気長に待っていただきたいです」。
秘伝のオリジナルソースは「食べた瞬間に思い出がよみがえるはず」と準備万全だ。
今回の事業は「このまちで無くなったら困るものを仲間でよみがえらせる」もテーマ。真木さんは「多くの人たちの協力でここまでこぎつけることができました。美味しいものを食べたらみんな幸せな気持ちになる。そんな思いが集まり、ずっと続いていく―。そんな場所づくりがしたいです」と話している。
店舗:とん㐂(とんき)住所:岡山県津山市二階町58。土日祝は休み。営業時間は午前11時~午後2時。メニューは、ロース定食が100グラム1000円~、ヒレ定食3枚1000円~、かつ丼1000円、みそかつ丼1000円など。