昭和30年ごろに岡山県美作市江見で実在した商店や民家をモデルにしたミニチュアハウスが並ぶ「『昭和の江見』回想展」が5日、同所の作東公民館で始まった。ノスタルジックな風情を醸し出す秀作が来館者たちの心を揺さぶる。4月18日まで。
制作者は、昨年8月に76歳で他界した江見出身の春名和子さん。多くの人でにぎわっていた在りし日の故郷を形にして子どもたちに伝えたいと思い、制作を始める。リアリティを追及した精巧な作りが話題を呼び、テレビでも紹介された。30年近く作り続け、約20点の作品を残す。
今回は実物の10分の1以下の模型13点に、春名さんのコメントや当時の写真を添えて展示。会場には女の子の憧れだった美しい草履やげたを販売していた「はきもの店」、働く人たちの憩いの場だった「木村食堂」、地域の台所「江見食料品店」、娯楽施設「江見劇場」などがずらり。店頭に並ぶ商品や貼られているポスター、使っていた小道具に至るまで丁寧に作りこまれ、人々の生活や商店街の活気が感じられる。
訪れた地域のお年寄りたちはじっくりと眺めながら、懐旧の情に浸っていた。実家の「坂本商店」を再現した作品を見ていた貞森美子さん(75)=同=は「記憶に残る姿そのもの。みんなで遊んだ楽しい記憶がよみがえってきた。見ることができてうれしい」と話した。