世界的に活躍する彫刻家・画家の武藤順九さん(岡山県津山市昭和町)と市民らのトークセッションが14日、同市田町の中島病院旧本館(城西浪漫館)で開かれ、「津山の文化とまちづくり」をテーマに意見を交わした。
同館での個展開催に合わせて企画した武藤さんが「ローマを制作拠点に半世紀、世界や日本各地を見てきたが、津山は城下町の町並みの中に明治、大正期の近代洋風建築が多く残る貴重なまち。だが、市民はそれにあまり気づいておらず、若い世代がどう活用していくかが課題」と指摘した。
中島弘文同病院理事長は「102年の歴史あるこの建物も2003年に取り壊しが計画されたが、有志の要望で踏みとどまった。今こうしてアート展に活用されているのを見ると残してよかったと実感する」。白石惇与市議は「子どものころから何もないまちだと思ってきたが、武藤さんらの評価を聞いて誇りに思えるようになった。まずは自信を持って、子どもたちに素晴らしい所がたくさんあると伝えていくことが大切だと思う」と話した。
歴史的建造物の保存に尽力している歯科医院長・豊福恒弘さんは「明治の洋風建築だった田町の旧杉山医院が昨年取り壊されたが、ほかにも市民に知られていない価値ある建物が市内にはまだある」として詳細を説明した。
同席した谷口圭三市長は「本年度からまちじゅう博物館構想の具体的な取り組みに着手する。城東、城西の重伝建などの魅力を地域の皆さんに再認識してほしい」と呼びかけた。
武藤さんは総括して「これらの歴史的建造物をうまく保存活用できれば30年、50年後、津山は文化遺産のモデル地区にもなり得る」と強調。約30人が熱心に聞き入った。