夫の雅彦さんは、北海道旭川市出身。約14年前の2008年に妻の実家がある宮部上に移住した。「それまで暮らした場所に未練を残さず、人生をリセットするような気持ちが大切だ」。北の大地とは異なる環境の中、津山人になろうと自分なりに奮闘してきた。
使っているノートパソコンの中には、雪と氷に閉ざされた自然や野生のキタギツネ、アザラシなど、道内で撮影された数々の写真が保存されている。
津山市に来るまでは自然写真家として活動。大手カメラメーカーとプロ契約を結び、作品は雑誌や教科書などに掲載された。その経験を生かし、現在でも市内で写真教室を開催している。
自然や動物が好きな妻の未央さんと北海道で出会い、結婚。未央さんが実家の長女だったこともあり、30年以上住んだ古里を後にして生活の基盤を津山に移した。「信号は多いし道は細いし、山に囲まれていて視界が狭く感じた。夏場は湿度が高く、汗が止まらず、初めは病気にかかったかと思った」と冗談交じりに話す。
気候も地理も違う北国の出身者も、今では中山間地域に馴染んでいる。宮部地区の祭りの運営や住民共同のとんど焼き、みそ作りなどに携わるほか、小学校のPTA会長も務め、仕事以外でも多くの人とつながる。
「正直、津山の人は雪国の人と比べて冷たいと感じていた。でも年齢や地位に関係なく、つながっている人同士は仲間意識が強く、いざという時に協力し合うのが魅力。まちづくりの面では、良いものが多くあるのに磨き切れていない印象がある。かたちにするには、プロフェッショナルな人材が欠かせないと思っている」。
そう話す言葉の端々には、作州弁が混じっていた。
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津山市に移住して約14年になる北海道出身の末澤雅彦さん
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