自閉症を抱えながら、アーティストとして活動してきた美作高校2年生の伴秀眞さん(16)=西中=と、それを見守り続けてきた母親の瑞穂さん(50)が作品集を自費出版した。生きづらさと向き合いながら6年に及ぶ軌跡をまとめた1冊。絵画の1枚1枚に「世界中が幸せでありますように」との祈りを込めている。
緻密な線と鮮やかな色づかい。ハートや卵、カエルなど、登場するキャラクターたちも個性豊かで愛らしい。54ページにわたる作品世界は、見る人の心をやさしく包み込むかのよう。
秀眞さんは5歳のころ自閉症と診断された。幼少のころから絵を描くことが好きで、10歳の時、岐阜県の障害者支援施設の関係者に声をかけられたことを機にアーティストとしての日々をスタート。「S・BAN☆」の名で活動してきた。色鉛筆や油性マジックなどを使用。独特の表現力は繊細さを増し、東京などでの個展開催や、パラリンアートInnovation AWARD2022で最優秀賞を受賞するなど才能を輝かせてきた。
作品集のタイトルは『神さまはぼくに自閉症っていうへんてこな名前の障がいをくれた。』。収めたのは、これまでに描き続けた23点。自身を投影したキャラクターや、戦争が続くウクライナに思いを寄せた作品もある。
以前は思ったことをなかなか言葉や文字で伝えられず、コミュニケーションが苦手だった秀眞さん。絵は自己表現できる心の支えで「描いている時は楽しくて幸せ。達成感もある」という。
ともに歩み続けた瑞穂さんにとって子育ては苦悩と孤独の連続だったが「障害という個性を持った子どもに寄り添って生きることは容易ではないけど、小さな喜びや胸の震えるような感動がたくさんある」。作品集には、当時の心境をつづった文章や季節の写真を添えた。
秀眞さんは、心と体の性が一致しないトランスジェンダーでもある。悩みを抱えていたが、昨年春、美作高校に新設された「Bloom(ブルーム)コース」に入学。中学時代に発症したうつ病からも回復し、毎日休まず登校している。
性格的にも積極性が出てきたといい、自分らしく生きる道を模索する秀眞さん。「神様がくれた自閉症。この障害に生まれたから絵を描く楽しさに出合えた」。一旦、筆を置きアーティスト活動は休止中だが「自分の経験をさまざまな悩みを抱える人たちに伝え、勇気を与えたり、幸せを感じてもらえたらうれしい」と話している。
電子書籍が中心でアマゾンのキンドルストアなどで扱っている。1500円。
問い合わせは、伴瑞穂さんのEメール(mizuho.ban86@gmail.com)。