特集「ザ・作州人」 パティスリー「レセンシエル」オーナーパティシエ 牛島源希さん

ザ・作州人
         

 その先にあるものを探し求めて

 パティスリー「レセンシエル」オーナーパティシエ 牛島源希さん

 今回の「ザ・作州人」は新進気鋭のパティシエとして高評価されている牛島源希さん(36)に登場してもらった。好奇心に導かれ、津山から東京、そしてニースへ。現在は東京・小石川で香りをコンセプトにした人気のパティスリー「レセンシエル」のオーナーシェフだ。その一方で、異業種とコラボし、新たな商品開発にも乗り出している。


 好奇心と向上心。この二つがあれば、人はきっと、どこまでも高く遠くへ行くことができるのだろう。「おいしいケーキをつくって食べたい」というピュアな思いから始まった牛島さんの足跡をたどると、ポジティブな気持ちにしてくれる。
 「津山で修業しているときも大阪や東京に行ってみたいな、行って腕を磨きたいな、と思ってました。東京に行くと、今度は本場のパリへ行きたくなり、行けば、きっと何かがあると、憧れのようなものを抱いていました」
 もちろん、将来に備え、冒険心と計画性をうまく組み合わせた。津山東高時代には地元の「ら・めーる」や「コペンハーゲン」でアルバイトとして働き、卒業後は「ラ・プロヴァンス」で修業を積んだ。面接の際に2年後には東京に、という思いを伝えたそうで「就職した後も岡山や広島で開かれたパティシエの講習会に積極的に参加しました」と言う。
 そこで同業者との人脈が広がり、2年後の上京につながる。パリで活躍していた青木定治さんが東京に上陸する際に「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ」のオープニングスタッフの一員として声が掛かったのだ。
 ここでさまざまな刺激を受け、24歳で渡仏し、南仏のニースへ。日本人が経営するレストラン「ケースケ・マツシマ」で働く間に、シェフとしての自身の方向性を決定づける大きな刺激を受ける。店名のレセンシエルは英語だとエッセンシャルとなり、香りを意味するが、南仏の光を浴びながら1年間滞在したことがベースになっていると言う。
 「ワーホリで1年間、勉強がてらお試しで働かせていただき、どんな街なのか探れたらと思ったんです。プロヴァンス周辺は香水の街のよう。ハーブやラベンダーなどの花があふれていて、香りが生活の中心にあった。香りにこだわるのは、このときのニースでの修業時代に学んだもの。その経験が今の僕のスイーツ作りにいかされています」
 帰国後は東京で着実に力をつけ、2014年10月、28歳のときに独立。東京・小石川にオープンした店は開放的な大きな窓が特徴のカフェでパリにでも迷い込んだような空間が広がっている。
 場所は地下鉄「茗荷谷駅」から7分ほど。東京の桜の名所にも挙げられる播磨坂さくら並木をゆっくりと下ったところの右手にある。周囲の緑に溶け込んだ絶好のロケーション。こんな物件と巡り会えるのも牛島さんの人徳と運の強さを感じさせる。
 「1人でできること、2人でできること、5人でできることがあると思いますし、やれること、やらないといけないこともある。吸収したり、蓄えたりしながらバランス良く、取り組んで行くつもりです」
 数ある中でも人気のスイーツはシューアラクレーム。そう、平たく言えばシュークリーム。パクッといただいたが、カスタードクリームがべっとりと濃厚でバニラのような甘い香りが口の中から鼻に抜け、いつまでも余韻が感じられた。聞けば、間もなく同じ小石川に2号店を出すとのこと。それも納得できた。
 そんな気鋭のシェフがほっとかれるはずはなく、アパレル業界など異業種の飲食店進出にも声が掛かり、新商品の開発に取り組んでもいる。
 「僕は夢に向かって走って来た。迷いはありますが、自分を信じてやること。やれば、やるほど知らない世界が見えて楽しい。いつか津山でも何らかのアクションができたらと思います」
 牛島さんは、そう言ってはにかんだ。

Patisserie L’essentielle(パティスリー レセンシエル) https://www.lessentielle.info/home

 
 ◇牛島源希(うしじま・げんき)1986年2月10日生まれの36歳。北陵中から津山東高へ。地元の洋菓子店で修業を積み、東京へ。24歳で渡仏。2014年10月にパティスリー「レセンシエル」を開く。間もなく2号店を開業予定。既婚。

(山本智行)

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