【ザ・作州人】ピアニスト 中島結里愛さん

ザ・作州人 中島結里愛さん
中島結里愛さん
         

 今月の「ザ・作州人」は記念すべき第100回にふさわしい、未来ある天才ピアニストの中島結里愛さん(16)に登壇してもらった。世界三大ピアノコンクールの一つ 「ショパン国際ピアノコンクール」 に史上最年少15歳で出場する空前絶後の大記録。10月18日に生まれ故郷・津山での凱旋公演を控える彼女のこれまでの歩みと、その素顔に少しだけ迫ってみた。

 パンパカパーン!記念すべき連載100回目には、この人しかいない。津山が生んだピアニストの中島さんは16歳の高校2年生。もちろん、このコーナーに登場してくれた数々の大物作州人の中でダントツの最年少だ。

 取材前は勝ち気な感じかなと思っていたが、接してみると意外とおっとりした女子高生。朗らかで清らかな印象ながらしっかりと芯がある。そんな中島さんの名が世界にとどろくきっかけとなったのは昨年10月に開催されたクラシック音楽界の最高峰「ショパン国際ピアノコンクール」への本大会出場だ。

 応募総数は世界からえりすぐりの642人。中島さんは動画審査を経て162人まで絞られた予備予選に参加し、見事に突破した。会場となったポーランドの「国立ワルシャワ・フィルハーモニーホール」はピアニストなら誰もが一生に一度は立つことを夢見る憧れの聖地。1000席あまりと決して大きなキャパシティではないものの、それゆえに審査員や聴衆との距離が近い。

 極限の緊迫感のなか、当時わずか15歳の中島さんは世界の精鋭たちと渡り合い、本大会出場証明書のディプロマを獲得する快挙を達成した。大げさに言えば人類史上最年少。この模様は「NHKスペシャル」など様々なメディアでも伝えられたほどだ。

 なぜ、このコンクールがすごいかというと、一番は5年に一度という機会の少なさ。「音楽界のオリンピック」 と言われるゆえんがそこにある。 過去にマルタ・アルゲリッチやクリスチャン・ツィメルマンらを輩出。 日本からもこの登竜門を経て中村紘子らが世界へ飛躍している。

  「いつか出たいと思いつつも前回は小学生。今回もこんなに早く出られると思ってなかったのですが、機会をいただいてありがたいですし、ショパンの良さを自分の音楽に乗せて届けられたらという思いでした」

 世界中の専門家や聴衆を特にうならせたのが、 彼女の持つ圧倒的な叙情性だった。激しい競争の場でありながら深くおだやかな独自の音楽性。その唯一無二の魅力は、現地のメディアからも称賛された。 しかし、本人はいたって謙虚。コンクール後も心境に変化はそれほどないと言う。

  「年齢に注目されるのはありがたいことではありますが、審査はだれもが同等で本物かどうかだけが試される。もちろん、ディプロマをいただけたのは大きなことですが、本質的なところは変わっていなくて、音楽の力を最大限引き出し、聴いてくださる方の心に寄り添えるような演奏を大切にしていきたいです」

 名は体を表す。結里愛は母・千香さんによると「国を超えて多くの人に愛され、世界の架け橋となってほしい」との思いから。現在は母と同居し、国内最高峰の音楽環境である東京芸術大学音楽学部付属音楽高等学校で日々、その才能に磨きをかけている。

  「中学生のときから月に何回かのペースで東京に通っていたので慣れてはいましたが、生まれ故郷を離れる際には寂しさはありました」

 とはいえ、音楽がそばにあれば大丈夫。バイオリン、チェロ、フルートなどを学ぶ仲間とアンサンブルを楽しむ一方で休日には都内をサイクリングし、気分転換をはかっているという。

 そんな彼女が、楽しみにしているのがこの10月18日に故郷・津山での凱旋公演だ。中島さんは「今度の演奏は京都市交響楽団とのコンチェルト。その前に東京と京都で演奏し、津山が最後となる。応援してくださる方もたくさんいるのでいい演奏をし、成長した姿を見ていただきたい」と、声を弾ませた。

 すでにこれまでヨーロッパの主要国やアメリカ、台湾、韓国など10カ国以上を訪問。コンクールの褒賞公演として、ニューヨークのカーネギーホールやワルシャワのワジェンキ宮殿でも演奏した。国内では迎賓館赤坂離宮、大阪・関西万博ポーランドパビリオンをはじめ、昨年は各地で23回のソロリサイタルに出演した。

 輝かしい未来と、無限の可能性を秘めた天才ピアニスト。「今後もいろんなところでリサイタルを行い、海外でも活動していきたい。これから先、50年くらい、ピアノで私の思いを伝えていきたいです」

 大人びた面とピュアな面を合わせ持っているのが中島さんの魅力。105歳まで活躍した室井摩耶子さんのことを思えば、50年と言わず、もっともっと音楽の魅力を伝えていってほしい。
(山本智行)

 ◇中島結里愛(なかしま・ゆりあ)2009年(平成21年)12月18日生まれ。幼少期より母・千香さんの手ほどきを受け、5歳から6年連続で津山音楽コンクール優勝。その後も国内外の大会で活躍し、25年「第19回ショパン国際ピアノコンクール」本大会に史上最年少の15歳で出場。津山中から現在は東京芸術大学音楽学部付属音楽高等学校2年に在学中。


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